
家族の一員であるペット。かけがえのない存在ですが、突然の地震が起きたときペットの安全は確保されていますか?ペットが寝ているときに地震が起きたら、ペットだけが自宅で被災したら、自宅から避難しなければならなくなったら…。
もしものときに備えて普段から準備しておくことと、避難時に注意することをまとめました。今回は犬&猫編です。
目次
普段からの備えがペットの命を守る

突然の地震に驚いてパニックになるのは人も動物も同じです。しかし動物は言葉が理解できない分、突然の状況の変化に対応するのが難しいもの。いざというときのために普段から備えをしておくことが、地震でペットの命を守ることにつながります。
ペットのための防災グッズ
地震に備えて、ペットのためにどんなものを準備しておけばいいのでしょうか。災害時はやはり人命が優先となり、ペットのための食糧や日用品は後回しになってしまいます。ペット用の物品が手に入らなくても生活できるよう、食糧や消耗品は1週間分備蓄しておきましょう。
《物品リスト》
- ペットフード(持病がある・高齢の場合は多めに)
- 水
- おやつ
- 食器
- 薬
- キャリーバッグ
- 首輪・リード・ハーネス
- トイレ用品(ペットシーツ・猫砂・処理用具)
- ペット用おむつ・マナーベルト
- いつも使っているタオル
- お気に入りのおもちゃ
- ガムテープ
- 洗濯ネット(猫の場合)
物品のほかにも、ペットの情報もまとめておきます。ペットの特徴や健康状態を「健康手帳」としてまとめておけば、もしペットを預けなければいけなくなったときや、ペットとはぐれてしまった際に役立ちます。
《ペットの情報》
- ペットの名前・年齢
- 犬種/猫種・外見の特徴
- 健康状態
- ワクチンの摂取状況
- 既往歴
- かかりつけ院
ペットの「健康手帳」は、無料で提供されているテンプレートもあります。使いやすいものを探して利用するのもいいですね。
犬用健康手帳:
Benesse「もしものときの愛犬カード」
猫用健康手帳:
Benesse「もしものときの愛猫カード」
自宅の安全対策
地震が起きたときにペットが離れたところにいる、飼い主が外出していてペットだけが自宅にいるという状況も考えられます。ペットと離れていても危険がないよう、自宅の安全対策をしておきましょう。
家具の転倒防止やガラスの飛散防止、収納の中身が飛び出さないよう対策しておけば、ペットだけではなく人間の安全にもつながります。特にペットがいつも寝ている場所、日中過ごすことが多い場所の周囲に危険がないか、チェックしましょう。
室内の安全対策については、こちらを参考にしてみてください。


大型犬など屋外で飼育している場合は、周囲に危険物(ガラス窓やブロック塀など)がないか確認しましょう。
室内でも屋外でも、ペットが逃げ込める避難場所を作っておきましょう。犬小屋やケージ、ハードタイプのキャリーバッグなど、上から物が落ちても潰れないものがおすすめ。普段からその中に入ることに慣れておくと、急に地震が来たときに避難場所に自分で逃げ込むことができます。
身元確認のために
地震で自宅のガードに隙間ができてペットが逃げ出す、避難の途中ではぐれてしまうという可能性もあります。いなくなってしまったペットを探したり、見つかったペットを引き取ったりする際に必要なのがペットの身元確認です。飼い主と離れ離れになってしまっても戻ってこれるよう、身元表示をしておいてあげましょう。
《ペットの身元表示》
- 迷子札を着ける
- 鑑札(犬の場合)
- マイクロチップの装着と登録
- ペットの最近の写真(全身、顔のアップ、飼い主と一緒に写っているもの)
犬は鑑札や狂犬病予防注射済票を装着することが義務付けられていますが、猫にはそうした規制がないため要注意です。
東日本大震災では、保護された飼い主不明のペットのうち、迷子札・鑑札がついた犬85頭は全て飼い主が判明したのに対して、身元確認の表示がなかった猫39頭は1匹も飼い主が判明しなかったそうです。
環境省「東日本大震災における被災動物対応記録集」p.26
またペットの最近の写真は、いなくなったペットを探す際に役立ちます。ペットに身元表示がされていない場合は、見つかったペットを引き取る際にペットと飼い主が一緒に写った写真が証明となりますので、普段から準備しておきましょう。
マナーとしつけ
避難生活の中で人間とペットの健康を守り、近隣の人に迷惑をかけないようにするには、日頃からペットにしつけをしておくことと飼い主のマナーが重要です。
ペットに身につけさせておきたいしつけと、飼い主として意識して守るべきマナーをご紹介します。
《ペットのしつけ》
- リード・ハーネス・キャリーバッグ・ケージに慣らしておく
- 頻繁に吠える・鳴く・騒ぐことがないように
- 犬は噛まない、飛びつかないように
- 飼い主以外の人・他の動物・物音に慣らしておく
- 決められた場所で排泄ができるように
- (犬の場合)「まて」「おいで」「おすわり」など指示に従えるように
様々な状況に慣らしておくことで、普段と違う環境に置かれたときのペットのストレスを減らすことができます。しつけがなかなか思うようにいかない場合もあるかとは思いますが、ペットを守るため根気強く行いましょう。
《飼い主のマナー》
- ペットの健康管理
- 脱走の防止
- 臭い・抜け毛対策
- 排泄物の処理などの衛生管理
- 他人への配慮
過去の震災では、マナーの悪い飼い主のせいでペットが他の避難者に迷惑をかけ、ペットの同行が全面的に禁止となった避難所もあったそうです。飼い主の意識が低いとペットの安全を守れないばかりか、他のペットや飼い主にも迷惑をかけてしまいます。大切なペットと一緒に、周りの人も気持ちよく過ごせるよう日頃から気を配っておきましょう。
避難所の確認
自宅の周辺で、ペットを連れて避難できる避難所を確認しておきましょう。避難所が被災することも考えられますので、複数箇所押さえておくと安心です。
避難所の場所やルート、途中に危険な箇所がないかも併せて調べておきましょう。情報を家族と共有し、実際にペットを連れて避難所まで歩いてみるのもいいですね、
住んでいる自治体のペットの防災に関する取り組みも確認しましょう。ペットの同行避難訓練などのイベントを行なっている自治体もありますので、是非参加しましょう。
地震が来たとき、ペットをどう守る?

まず自分の命を最優先に
突然地震が来たらペットのことが気になるかと思いますが、揺れている最中は自分の頭を守る、安全な場所に移動するなどの行動を取りましょう。飼い主が生き残らなければペットも生き残ることはできません。まずは自分の身を守り、揺れが落ち着いてからペットの安否確認や確保を行います。
大きな揺れが来たらパニック状態に陥ってしまいますが、動物は人の精神状態を感じ取るので、飼い主の不安はすぐにペットに伝わります。ペットを落ち着かせて不安を取り除くためにも、まずは飼い主が冷静になって状況を確認しましょう。
ペットとはぐれてしまったら
早めに捜索を開始する
ペットがいなくなってしまった場合、二次災害に遭わないよう注意しながら、いなくなった場所や自宅の周辺を中心になるべく早く探し始めます。
猫はあまり長距離移動をすることはないので、自宅やその周辺を探します。見える範囲だけではなく、植え込みや車の下、塀や自販機の上、物陰など立体的に探しましょう。
犬は直線的に動くことが多いので、逃げた方向に探しに行きます。1日に何㎞も移動することができるので、遠くに行ってしまう前に探し出すようにしましょう。犬には帰巣本能がありますが、地震によるパニック状態で、しかも周囲の状況も変わっているため自力で帰ってくることは困難です。必ず探しに行きましょう。
探しても見つからなかったら
どんなに探しても見つからない場合は、次の捜索方法を実行します。
- 警察・保健所に届けを出す
- ポスターを貼る
- インターネットを使って探す
インターネットを活用する方法は、迷子ペットの掲示板に投稿したり、SNSで呼び掛けたりするなどがあります。
ペットが見つかったら届け出先や捜索を依頼した関係各所に報告してお礼を伝え、ポスターは全て回収しましょう。
避難しなくてはいけなくなったら

ペットは同行避難が原則
自宅での生活が困難になって避難が必要になった場合、なるべくペットを連れて行くようにします。過去の災害では多くのペットが飼い主とはぐれ様々な問題が起きたため、同行避難が原則として定められています。(環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」)
同行避難とは:
災害発生時に飼い主が飼育しているペットを同行し、避難所まで安全に避難すること(東京福祉保健局HPより引用)
避難の際はペットの同行が義務というわけではないので、飼い主や自宅の被災状況、避難所までの距離、周囲の状況を考慮して、ペットを連れて行くか判断しましょう。
同行避難する際のポイントは、こちらのサイトを参考にしてみてください。
まとめ
ペットも大事な家族であり、非常時だからこそ癒しや頑張る原動力になってくれる存在です。いつ来るか分からない地震を一緒に乗り切るには、日頃からの備えと信頼関係が不可欠。大切な家族を守るために、今日から準備を始めましょう!
参考資料
猫びより編集部(2018)『決定版 猫と一緒に生き残る 防災BOOK』日東書院本社
徳田 竜之介(2018)『どんな災害でもネコといっしょ:ペットと防災ハンドブック』小学館
徳田 竜之介(2018)『どんな災害でもイヌといっしょ:ペットと防災ハンドブック』小学館