地震での家具の転倒被害を減らそう!家具の転倒防止対策や配置のポイント
日本は言わずと知れた地震大国。いつ大規模な地震が起こるかも分からないので不安に感じている人も多いかもしれません。
「地震に備えて対策したいけど、何から始めればいいか分からない」という場合は、まずは自宅の家具の転倒対策から始めましょう。地震が来ても家具が倒れない、倒れても被害を小さくするための対策をご紹介します。
地震が起きたら家の中はどうなる?
震度5以上の揺れで、家具が転倒・移動するとされています。家具自体が動かなくても、棚に置いていたものが落ちてくることもありますよね。じつは、地震による怪我の原因の第1位は家具の転倒・移動・落下によるものなんです!
家具が転倒、移動、落下することによってこんなことが起こる可能性があります。
- 倒れた家具の下敷きになる
- 落ちてきた物・飛んできた物が当たって怪我をする
- 家具にぶつかって怪我をする
- 物がストーブやガスコンロなどに当たって火災が発生する
- 通路が塞がれる
- 扉が開かなくなる
家具が動いたことが直接の原因でなくても、火災が起こったり、避難が遅れたりすることで二次災害が起こる可能性があるんですね。
高層階ほど要注意
地震では低層階より高層階の建物の方が大きく長く揺れ室内被害がひどくなります。東日本大震災での被害調査によると、1〜5階の低層階では家具の転倒・落下の発生率が全体の20%未満だったのに対して、10階以上の高層階では30%を超えていたという結果が出ています。(参考)
ですから、特に10階以上の高層階にお住いの場合はよりしっかりとした家具の転倒・落下・移動対策が必要だと言えます。
高層ビルの揺れ方について詳しくは「気象庁HP」を参考に。
地震で倒れやすい家具は?
大規模な地震の時はすべての家具が倒れる危険性がありますが、特に注意したいのは以下の家具です。
- 奥行きが浅く、背が高い家具
- 柔らかい床(カーペットや畳)の上に置いた家具
- キャスター付きの家具
- タンスなど引き出しのある家具
- ガラスで作られた家具
引き出しのある家具は、家具自体が倒れなくても引き出しが飛び出してくることがあり、危険です。収納していたものが吹き飛ばされることも。また、ガラスを使用した家具は割れると破片が散らばり怪我をするリスクがあります。
その他にも、地震で物が落下したことのある家具や揺れている家具は特に注意をしましょう。
照明にも注意しよう!
ペンダントライトは落下の可能性あり、ガラス製の照明は割れた際に危険なので特に寝室などは避けましょう。
寝室の照明はカバー付きシーリングライトがおすすめです。
割れにくい樹脂製のカバーで、調光調色・タイマーなど便利な機能付き。最近は機能が豊富なものもリーズナブルな価格で手に入ります。
家具の配置で地震対策!
家具の置く場所や向きを変えれば、例え家具が倒れたとしてもけがなどのリスクが軽減します。
生活空間に家具を置かない
まずはリビングや寝室などの生活空間と、収納のスペースを分けることを検討しましょう。
収納はクローゼット・押入れ・納戸・床下収納を活用する、などして大型の家具は置かないようにすれば、かなり危険度が下がります。
生活空間から完全に家具をなくすのは難しい…という場合は、寝室だけでもなるべく家具を置かないようにしましょう。「寝ているときに家具が倒れてくる」という最も危険な状況を避けることができます。
家具の位置・向きを考える
現在配置している家具の位置や向きを工夫することで、危険を減らすこともできます。
東京消防庁『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック』では、家具の配置について以下のように記載されています。
- 転倒した際に通路や出入り口を塞ぐ方向には置かない
- 座る場所・寝る場所付近の家具は、人に向かって倒れてこない向きに置く
- 窓際には重さのある家具や移動しやすい物を置かない
東京消防庁『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック』より引用
少し移動させるだけでも地震時の事故を防ぐことができるんですね。とは言え部屋の広さや窓・ドア・収納の位置関係もあるので、理想通りに置くのは難しいかもしれません。
すべてを安全な場所に配置するのが難しい時は、寝ている場所の安全だけは最低限確保しておきましょう。
例えば…
<CASE1>ベッドに倒れてくる位置に背の高い家具がある
→ 家具をロータイプに変更する、もしくはベッドをロフトタイプに変更する
ロフトタイプのベッドなら、下に収納できるので寝ている間に物が倒れてくるという心配はなくなりますね。ただし、ベッド自体が倒れないよう、補強がしっかりされているものを選びましょう。
<CASE2>布団を敷いた枕元にテレビ台がある(頭にテレビが落ちてくる可能性)
→ テレビ台側が足元になるよう布団を敷く向きを変える
「家具を買い換えるのは出費が…」「布団の向きを変えると北枕に…」など気になるかもしれませんが、安全には変えられません。すぐには難しくてもできることから実践してみてください。
収納の使い方でもリスク回避!
収納の使い方を少し変えるだけで、転倒・落下・移動しにくくなります。自宅の収納を見直してみましょう。
- 柔らかい床(じゅうたん・畳など)に背の高い家具を置かない
- 重いものを下に収納して重心を下げる
- キャスターつきの家具はロックをかける
すぐにできる対策もありますので、ぜひ実施してみてくださいね。また、周囲に家具がない安全スペースを作って置くと地震発生直後の避難場所になります。どこか一カ所だけでも安全なエリアを作っておきたいですね。
家具が倒れないように対策しよう!
家具の位置や向きを改善したら、家具の固定を検討しましょう。天井や床に固定することで、より家具が転倒しにくくなります。固定方法はいくつかあり、主なものは以下のとおりです。
- L型金具(下向き取付け・上向き取付け)…L字型の金具で家具を壁に直接固定する
- ベルト…家具と壁・床をベルトでつなぐ
- つっぱりポール…家具と天井の隙間をつっぱり棒で支える
- 粘着マット…粘着力の高いマットを家具の下に敷く
- ストッパー…厚みのあるゴム板を家具の前側に敷く
家具を固定する方法はそれぞれ効果が異なり、使用できる家具も異なります。組み合わせて使用することでより効果が高まるとされています。
内閣府HP『防災情報のページ』より引用
続いて、具体的な使い方を見ていきましょう。
<持ち家>ガッチリ固定派向けの固定具
家具をしっかりと固定したい、持ち家で壁に金具を取り付け可能な人にはL型金具やベルトがおすすめです。金具でしっかり固定するので、見た目が気になるというデメリットがありますが、大きな家具でもガッチリと壁に固定するので安心ですよ。
《商品例》
L字金具よりもベルトの方が目立たないですが、強度はL字金具の方が高いです。ベルトは小さいので小さめの家具や家電などにも使用可能です。また、着脱できるので掃除など家具を移動したいときに一時的に取り外すこともできますよ。家具の種類や場所に合わせて選んでみてください。
しっかりした壁に設置する
L型金具やベルト式の固定具は、壁内の柱部分や十分な強度のある壁に設置する必要があります。強度のない壁に固定具を取り付けるとビスが抜けてしまったり、壁ごと壊れたりする恐れがあるので注意しましょう。
壁内の柱の位置を探すには、壁をコンコンと叩いて音で確認する方法と、下地センサーを使う方法があります。
下地センサーとはこちら。
我が家では洗濯ワイヤーを取り付けるときに下地を探していたのですが、コンコン叩いているとだんだん分からなくなってきてしまいました。センサーがあるのに越したことはないと思いますよ!
下地センサーの使い方はこちらを参考にしてみてください。
固定具は設置方法を守らないと、本来の性能を十分に発揮することができません。固定具を設置する前に使用説明をきちんと読むことが重要です。
固定具の性能や耐荷重はもちろん、設置する壁の材質や設置の角度なども強度に影響する場合があります。しっかり確認し、正しく設置しましょう。
<賃貸OK>原状回復希望派向けの固定具
なるべく壁や家具を傷つけたくない、賃貸住宅に住んでいて壁に設置するのが難しいという人には、つっぱりポールや粘着マット、ストッパーがおすすめです。内装や家具は傷がつかずインテリアにもあまり影響しませんが、重さのある家具の場合はあまり効果が期待できない場合があります。
賃貸で使用できる固定具についてはこちらの記事で詳しくご紹介できます。
家具を固定して転倒を防いでも、中身が飛び出して被害が出る場合もあります。家具だけではなく、収納物の飛び出し対策や扉・引き出しのロックも併せて行いましょう。
電化製品にも地震対策が必要
背の高い家具の転倒対策に目が向きがちですが、家電も地震対策をしておきましょう。大きな揺れでは棚の上の電子レンジや炊飯器が落下する、机の上のデスクトップパソコンが飛んでくる、ということもあります。
特にテレビと冷蔵庫は地震後の生活に不可欠なライフラインと言えます。テレビが壊れて情報が得られない、冷蔵庫が倒れて食糧が保存できない、などということがないように、しっかりと対策しておきましょう。
家電は家具と同じように固定グッズが使用できない場合もあります。詳しくはこちらをどうぞ。
定期的に見直しを
一度固定具を設置してずっと放ったらかし…ではいけません。時間が経つと固定具が緩んだり、劣化して性能が落ちたりします。
2〜3ヶ月ごとに点検するのが望ましいですが、最低でも年に1回は緩みがないか確認しましょう。例えば防災の日(9月1日)を点検の日にしたり、年末の大掃除で一緒に確認するなど決めておくと分かりやすいですね。
リフォームで家具の転倒を防ごう!
リフォームを検討しているのなら、収納場所を作って家具の転倒を防止するということもできます。
収納スペースを作る
生活スペースに大きな家具を置かないために、
- ウォークインクローゼット
- 玄関土間収納
- 納戸
- 床下収納
などを作って収納をまとめる、という手もあります。生活スペース以外に収納が一カ所に集中していれば物が倒れてきてもけがをしたり、避難の妨げになるということが少ないです。
ウォークインクローゼットの中に家具を置く、という人もいますね。
ウォークインクローゼットの中の壁一面に本棚を造り付けました。
造り付け本棚の最大のメリットは本棚が倒れないこと!たとえ地震があったとしても棚本体が倒れてくることはないので、安心ですね。
ホームプラザ信州の大工がお客様のお好みに合わせて、お客様仕様の本棚をお造りします。 pic.twitter.com/EAV0CVEpYm— ホームプラザ信州 (@hpsiida) June 4, 2018
床下収納は防災グッズや非常食を入れて置くと安心です。
熊本地震からもうすぐ5年
床下収納庫を
作って頂きました☺️
備えあれば憂い無し! pic.twitter.com/0RbX37KqDY— のりたま🍀358🍀 (@ichigooooo0914) April 5, 2021
土間収納についてはこちらの記事もどうぞ
ただし、防災グッズも一緒に収納してしまうと必要な時に取り出せない可能性があります。注意しましょう。
作り付けの家具を作る
広い収納スペースを作る余裕はないけれど、地震対策で何かしたい!という方は作り付けの収納を作るという手もあります。
壁面収納など作り付けの収納なら、家具自体が倒れてくる心配がありません。ただし、中身は落ちてくる可能性があるので対策をする必要があります。
収納物の落下を防止する方法はこちら。
壁面収納についてはこちらの記事もどうぞ。
本格的に地震に備えたリフォーム、耐震リフォームを検討している方はこちらをどうぞ。
まとめ
いつ来るか分からない地震だからこそ、日頃から常に備えておくことが命を守ることにつながります。とは言え、いきなり家中の地震対策を完璧に行うのは難しいですよね。まずは気軽に手に入るグッズを使って、寝室やリビングの見直しから始めてみてはいかがでしょうか。
自分のこととして考えることが、防災の第一歩です。いざというときに自分や家族の命が守れるよう、できることから始めましょう!
〈参考文献〉
地震イツモプロジェクト『地震イツモマニュアル』ポプラ文庫、2016年
国崎 信江『マンション・地震に備えた暮らし方 (地震防災の教科書)』エイ出版社、2013年